切らないミューカスシストの日帰り手術
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当クリニックのミューカスシストの手術の特徴
高精細エコーガイド下に、切らないミューカスシストの手術を行っています。切開を加える従来法と比べ、傷は目立たず、痛みも少ない手術になります。また、抜糸が不要で当日から水が使えます。(低侵襲手術ですが、関節を操作するため、多少の痛み、腫れが出現します。組織の修復と、強固な癒着を生じるまでには1~2ヶ月はかかるため、できるだけ無理はせずに、力仕事や不要不急の労働・作業は術後1~2ヶ月間は避けるようにしてください。)
*皮膚のダメージの強い水ぶくれを生じている場合、術後の創処置が必要になり、当日から水仕事が行えない場合があります。
通常おこなう治療法は?
注射と手術のすき間を埋める次世代手術
当クリニックでは、超高精細エコーを用いて、骨棘をわずかだけ切離し、関節液の漏れ口を破壊することで、切らずに再発を防ぐ次世代手術を導入しています。手術機器は注射針か極細のシェーバーを用います。超高精細エコーの利用することで、切開をせず内部を見ながら操作し、注射針程度の大きさの傷だけで、水たまりと関節とのつながりを破壊する根治術を行っています。「切らない」手術は、注射と手術のすき間を埋める新しい概念の手術です。
傷の大きさは注射とほぼ同じ
針による操作のみで行うため、痛みは注射に類似します。もちろん傷の大きさも注射と同じ。痕は残りません。
- 「切らない」ミューカスシストの手術の特徴
- 日帰り
- 痛みが少ない
- 傷が残らない
- 関節の動きが保たれる
- 出血が少ない
- 感染のリスクが少ない
- その日からお風呂に入れる
- その日から指が使える
- 術後消毒通院が不要
- エコーでモニタリングするから安全
- 万一再発しても再手術が容易
こんな方にお勧めします
①仕事を休めない方
②全身麻酔や上肢の麻酔が苦手な方
③痛みに弱い方
④水仕事をされている方、主婦の方
⑤傷を残したくない方
⑥ガングリオンの再発を繰り返している方
⑦音楽家やミュージシャンの方
手術はどのようにして行うの?
再発を防ぐには供給元を断つことが一番。供給通路を「アリの巣穴」と考えると、切らないミューカスシストの手術は、「アリの巣の入り口をくずす」要領でおこないます。すなわち、針もしくはシェーバーで入り口をくずし、血で蓋をして、それが固まって強固な癒着を起こすことを利用して再発を防ぎます。さらに、経路および袋もこわして、液が漏れても袋が膨らまないようにします。
水漏れの原因になる、①骨の棘、②発生部位、③経路、水たまりの④袋の4箇所を正確に壊すため、再発率を抑えることができます。
手術は局所麻酔下におこないます。そのため、日帰りで行え、またすべての症例でその日から軽く指を動かすことができ、お風呂に入れます。(しっかりとした癒着を起こすために、過度な運動は避ける必要がありますのでご注意ください)
使用するのはCanon製高精細エコーと24MHz高周波プローブ
手の手術に精通した手外科学会認定専門医が行う安心・最良の治療
中を見ずに手術操作を行うため、確実な知識と技術が必要です。当クリニックは、整形外科専門医の中でも、手の手術に精通した手外科学会認定専門医が行います。国内・海外で臨床を積んできた専門医が、極限まで合併症を減らした安心・最良の治療法を提供いたします。
日帰りで、その日から水に濡らしても大丈夫
患者さんの年齢層は、40代から中高年の方までと幅広く、社会的にも忙しい方ばかりです。切らないミューカスシストの手術は、通常の切開手術と比べ、すぐにお風呂に入れ、水仕事が可能です。また、可能な限り早期に仕事、日常生活に戻れます。
水ぶくれを生じている場合
水ぶくれれが生じ、何回も水を抜いたり、凍結療法などを行っている場合、皮膚のダメージが強いため、皮膚の処置が追加で必要になり、術後も傷の処置が必要になります。その場合、術後に、すぐには水に濡らすことが難しかったり、傷の処置のため通院が必要なことがあります。
術後の注意
この手術は、水たまりの発生口(靭帯を伴う関節包)をつぶし、あえて血のかさぶたをつくり、それで蓋をすることで穴を塞ぎます。また経路および液のたまる袋も壊します。そのため、関節周辺の炎症を起こすことがあり、疼痛がしばらく続くことがあります。組織の修復(発生部位の靭帯や周囲の滑膜が再生する時間)と、強固な癒着を生じるまでには1~2ヶ月はかかるため、できるだけ無理はせずに、力仕事や不要不急の労働・作業は術後1~2ヶ月間は避けるようにしてください。
再発を最大限防ぐために、術後に1~2週間は指固定装具をつけることを推奨しています。
また、水ぶくれの処置で皮膚の処置を追加した場合は、傷の処置がしばらく(1~3週間)必要になります。
もし再発しても大丈夫
針で吸引するだけでは、再発率は40~70%と言われていますが、本手術を行っても、おおよそ10~20%程度で再発を起こしてしまいます。その場合でも、この治療は注射の治療と同等の侵襲のため、再度行うことができます。どうしても再発する場合は別の方法を試す場合もあります。詳しくは診察時に医師にご相談ください。
切開するミューカスシスト手術との違い
切開するミューカスシストの手術は、切開が必要ですので、感染、腫脹・むくみ、出血・血腫、麻酔液量増加、それによる薬剤アレルギー、神経血管損傷、疼痛、CRPSなどの合併症のリスクは概ね増加します。手術時間が長く、止血帯を巻く時間長いため、それによる術中疼痛が起こります。切開するため、抜糸や消毒通院が必要になります。もちろん傷跡が残ります。関節周囲を触るため、癒着による関節拘縮が起こりやすく、その点でも侵襲の少ない手術が望まれます。
残念ながら切開法も切らない手術も、時には再発します。そのため、できるだけ侵襲の少ない手術の方が再発しても再手術の対応がしやすいと考えています。
手術の合併症・デメリットについて
本術式は切開をしないため、指への負担は少なくなっており、メリットが多いと考えられます。通常の切開を入れる手術よりも出血、感染、傷の痛み、関節の不安定性の進行、炎症の遷延、神経血管損傷、皮膚のトラブルにおいても優位性があると考えられます。
しかし、いかなる手術・処置も体に侵襲を加えるため、合併症のリスクがあります。具体的には、①薬剤によるアレルギー、②腫れや出血・血腫による合併症、③感染、④神経・血管損傷、⑤疼痛またはそれによる運動障害、⑥血栓・塞栓症、⑦皮膚瘢痕・ケロイド・創部痛、⑧関節拘縮もしくは関節不安定性(関節を操作する場合)、⑨骨壊死、骨癒合不全(骨操作を行う場合)、⑩その他の合併症(CRPSなど予期せぬ合併症や、患部のみならず他の部位の不具合など)などを生じることがあります。未来は予測できないことも生じますので、状況に応じて最善と思われる対処法(薬剤の投与、術式の追加、処置の追加、蘇生処置、救急搬送など)を行います。緊急の場合は、同意なく行うこともありますが、ご理解のうえ手術をお受けください。
その他、手術に関して不明な点がありましたら、術前に説明いたしますので、医師またはスタッフにご相談ください。
切開するミューカスシストの手術のデメリット
(切らないミューカスシストの手術との比較)
リスク | 注意点 |
---|---|
出血・血腫点 | 止血帯を巻く腕が術中痛い |
感染 | 手術時間増 |
腫脹、浮腫 | 消毒で2日に1回程度通院が必要 |
麻酔液量 | 抜糸が必要 |
薬剤アレルギー | 傷あとが残る |
神経血管損傷 | 10日~14日程度、水仕事不可 |
疼痛 | 切開後に癒着がおこり関節が動きにくくなる |
CRPS | 切開法でも再発するときは再発する |
関節周囲を大きく切開するため、関節拘縮(動きが悪くなる)、つっぱり感などが生じやすい |
治療費について
切らないミューカスシストの手術は、保険適応で行っております。
最後に
「切らない」ミューカスシストの手術は、当クリニックで開発された独自の手技です。日本で、同手法を早期より導入しているパイオニアクリニックとして、他院にはない繊細かつ緻密な方法で、ミューカスシストの再発や神経血管損傷などのリスクを減らし、安全性、確実性を進化させています。
新しい術式ですので、患者さまに、手術のメリット・デメリットをきちんと説明し、ご自身で選んでいただくこととしております。そして、選んでいただいた治療を可能な限り全力を尽くして行います。
当クリニックでは、患者さんとの信頼関係が最も重要であると考えています。お互いに信頼しあえなければ、治療を提供することはできません。ご不明な点はお気軽にご相談ください。
文責 整形外科専門医・手外科専門医 戸谷祐樹