切らないドケルバン病の日帰り手術

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ドケルバン病とは?

 ドケルバン病は手首の親指側に起こる腱鞘炎です。英語ではDe Quervain’s tenosynovitisといいます。手をひねったり、親指をまげて握ったりすると痛みが発生します。裁縫やゴルフなどの繰り返しの運動も原因ですが、加齢や産後や更年期などの女性ホルモンの変化が原因となったり、手首の骨の形が原因となることがあります。産後の場合は授乳が終われば改善に向かいますが、更年期の場合や骨に原因がある場合は、なかなか治りません。
 治療は装具や湿布が第1選択ですが、効果に乏しいことも多いので、注射を第2選択としています。しかし、次に述べる重症化しやすい条件がある方は手術が最終手段となります。
 重症度はエコーで判断いたします。腱鞘の肥厚が2mm以上のものや、ドップラーエコーによる炎症が腱鞘の両サイドにあるものや、腱の間にも腱鞘があるタイプのもの、腱の滑走が妨げられているものは、難治性なので、手術を考慮いたします。
 手術は従来は切開をいれて行うものしかありませんでしたが、当クリニックでは、独自の切らないやり方で早期の仕事復帰や家の仕事に戻れるように治療を行っています。

なぜ切らずに手術が行えるのか

 切らないドケルバン病の手術は、エコーを用いて、注射針だけで目的の組織を切開して病態を改善する小侵襲手術です。エコーを用いることでいままでできなかった体内の組織を切らずに標的にできるようになりました。
 エコーガイド下の小侵襲手術は、まだ国内外の一部の医療機関でしか行われていません。技術的に難しい面もありますが、エコーをガイドにして行う整形外科手術はまだほとんど導入されていないのが実情です。当クリニックでは、海外での経験を生かして、最先端治療が提供できる地域のクリニックとして患者さんの役に立っていきたいと考えています。

注射と手術のすき間を埋める「切らない」手術

 ドケルバン病は産後や更年期の女性など、比較的働き盛り、家庭の重役の方に多い疾患です。痛みのため、ビンが持てないなどの生活困難を生じますが、なかなか早期の改善が見込めない問題がありました。注射は即効性がありますが、持続性に乏しく、再発が多いのが現状です。装具療法は水仕事が多い女性にとっては、なかなか受け入れられるものではありません。かといって、切開する手術は傷ができたり、仕事を休んだり、水仕事を一定期間やめるなどの不自由を必要としました。

 切らない手術は針だけで行うため、傷がなく水仕事が当日からできて、痛みが少ないため仕事の制限も起きにくいため、新しい術式としてお勧めしています。

傷の大きさと痛みは注射とほぼ同じ

 ドケルバン病の手術を今までは皮膚に切開を入れておこなっていましたが、超高精細エコーの登場により、針による操作のみで治療できるようになりました。注射針で行うので、痛みは注射と同じ。もちろん傷の大きさも注射と同じ。痕は残りません。
 具体的には、
①局所麻酔を行います。
 注1)術前にエコーで神経や腱鞘の位置を正確に把握します。
②エコーを見ながら、腱鞘切開用の針を刺入します。
③エコー画像で針が確実に腱鞘と腱の間にあることを確認しながら、腱鞘を切開します。
 注2)腱が分かれて二つあったり、隔壁という腱と腱の間の壁があったりすることがある場合は、それぞれ腱鞘を切開します。
 注3)確実に腱鞘が切開され柔らかくなったのをエコーで確認します。

 注4)腱と腱鞘がくっついていたり、滑膜炎を起こしている場合は、隔壁を切離したうえで、Scraping(こすり落とすの英語)処置を行い、癒着と滑膜炎を除去する追加処置も行います。(通常、この処置は高度な画像描出テクニックと、針先の丁寧な操作が必要ですが、当クリニックでは豊富な症例経験に基づき、術中判断をしっかり行ったうえで、施行しています。)
④針を抜いて、圧迫止血をして終了です。

*なお、こちらの治療は自費診療(保険適応外)となります

切らないドケルバン病の手術

*切らない手術は自費診療(保険適応外)となります

切開した腱鞘の断面図

手の手術に精通した手外科学会認定専門医の行う安心・最新の治療

 切開をいれずに針の操作だけで手術を行うため、エコー操作技術と画像の評価、針先をつかった腱鞘切開技術が必要になります。当クリニックは、整形外科専門医の中でも、手の手術に精通した手外科学会認定専門医が行います。国内・海外で臨床を積んできた専門医が、極限まで合併症を減らした安心・最新の治療法を提供いたします。

日帰りで、その日から水に濡らしても大丈夫

 ドケルバン病の患者さんは、授乳中の方、中高年の方が多く、社会的にも働き盛りです。「切らない」ドケルバン病の手術は、今まで仕事や育児で休めないため、手術ができなかった方のための低侵襲手術です。仕事を休まずに日常生活にすぐに戻れます

こんな方に切らないドケルバン病の手術をお勧めします

 ドケルバン病の患者さんは、産後の若い女性や、中高年の方が多く、社会的にも働き盛りです。「切らない」ドケルバン病の手術は、仕事を休まずに日常生活にすぐに戻れるため、以下のような方に向いています。また、少量の局所麻酔薬だけで手術できるため、授乳中の方でも手術を受けていただくことは可能です。

①仕事が休めない方(早期の仕事復帰が可能)

②水仕事をされる方、主婦の方(すぐに水が使える)

③腕を使うスポーツをされる方(早めに動かせる)

④痛みに弱い方(傷あとが痛くなりにくい)

⑤傷を残したくない方(傷跡が残らない)

⑥通院回数を減らしたい方(抜糸が不要)

⑦音楽家やミュージシャンなど、手をよく使う方(癒着が少ない)
切らないドケルバン病の手術の特徴

使うのは超高精細エコー

 安心・確実な手術を行うために必須なのが、0.1mmの分解能をもつ超高精細エコーです。何より画像で確認することが最も重要であると考えております。そのため、当クリニックでは一部の大学病院レベルでしか採用されていない手の手術に特化されたエコー機器を用いています。

24Mhzのプローブを備える、Canon製超高精細エコー

ドケルバン病の各術式による比較


通常の切開を

する手術

「エコーを用いる」

切らない手術

傷の大きさ

2〜3cm

1mm

痛み

強い

少ない

皮膚・皮下への損傷

あり

ほぼない

安全性

(神経・腱の損傷の少なさ)

確実性

(切り残し・切りすぎの少なさ)

腱鞘追加切開への対応

切開の拡大が必要

同一刺入部から可能

手術当日の入浴

✖️

腱鞘の滑走の確認

直視下

エコー下

術前・術中・術後の腱鞘炎

の病態チェック

✖️

デメリットはありますか?

 切らないドケルバン病の手術は、直視下に行うより、見えない組織を傷つけてしまう可能性があると考えられていました。しかし、実はエコーで重要な神経や血管は見ることができるため、事前に損傷を回避できます。それでも、通常の整形外科で使われる18MHzのプローブではごく小さい神経や血管が見えない可能性がありました。そこで整形外科超音波診断治療を得意とする当クリニックでは、24Mhzの超高精細プローブ(エコーでは、周波数が大きいほど分解能が高い)を導入し、その危険性を可能な限り下げるようにしています。24Mhzの超高精細プローブは大学病院レベルでしか導入されておらず、同プローブを使用している当クリニックは、丸亀市、ひいては香川県でも数少ない医療機関の一つとなっております。

 また、万一切り残しがあったとしても、追加の注射処置を行うことで完全な開放を得ることができます。高精細エコーの導入によりそれはほぼ解消され、切開を入れる手術と同等の成果が見込め、痛みと傷が少ない安全な治療だと考えています。どうしても腱鞘が切れない場合や大きな隔壁がある場合は切開術へ移行させていただきます。

術前に炎症がある腱鞘炎について

 当クリニックでは術前にかならず、超音波の微小血管血流評価(SMIを行い、「腱鞘炎」の程度を確認いたします。腱鞘炎は、炎症性血管の拡張を意味します。最近では、この炎症血管をもやもや血管といい、痛みが長引く原因となっていることがわかっています。
 炎症がおこるしくみは、以下の通りになります。腱鞘が狭くなりすぎて、腱がその中を通る際に擦れて腱や腱鞘が削られてしまいます。それを修復するために免疫反応がおこって、栄養をおくる血管拡張がつづいて滑膜炎を生じます。炎症がおこると浮腫がおこり、さらに腱鞘や腱が腫れて、腱が通りにくくなる悪循環がおこります。
 この炎症は手術をして腱鞘を開くと、摩擦が減るため、徐々に改善していきますが、一部の症例では炎症が長引いて術後も患部のむくみが続く場合があります。
 当クリニックでは、過去の症例を検討したところ、①半年以上経過した慢性例②腱鞘のそばの橈骨に骨棘が存在③手関節屈曲テストが強陽性のうち一つでも満たすものが炎症が長引く傾向(難治性腱鞘炎)にあることがわかっています。

長引く炎症(難治性腱鞘炎)を生じた場合について

 腱のひっかかりが改善したにもかかわらず術後も長引く腱鞘炎を生じた場合(難治性腱鞘炎)には、二つの方法が選択可能です。

ステロイド注射:炎症止めのステロイドを患部に注射します。腱が切れる、感染症、糖尿病悪化など副作用もあり注意が必要です。ステロイドの効果が切れると再発する場合は②の治療を考慮します。 

もやもや炎症血管治療:炎症血管を塞栓し(詰め)て、血管ごと無くしてしまう治療です。効果は高く、ステロイドよりも持続性があり、ステロイドの副作用の腱断裂を生じることもないため、安全性の高い治療法です。日本の保険診療では認められていないため自費となります

もやもや炎症血管治療

炎症を長引かせないために

 腱鞘切開したあとは、部分的に腱鞘の天井が欠損します。現在のエコー検査で腱鞘は再生してくることがわかっています。再生には12ヶ月程度かかるため、術後12ヶ月は指の屈伸運動はあまりしないほうが無難です。切らない手術は傷がありませんが、かといって指の運動を術後早期よりやりすぎると難治性腱鞘炎のように炎症が遷延してしまいますので、ご注意ください。

腱鞘切開前後の腱の横断面

最後に

 通常の切開をするドケルバン手術は保険適応で行っておりますが、切らないドケルバン病の手術は自費診療で行っております。患者さんの痛みと手術の負担の軽減のために導入している治療法ですが、どうしても現在の日本の保険診療で認められた治療法では、先進的かつ高度な医療については対応しきれていない部分があります。患者さんには現在の日本の保険診療内で提供できる治療の質・内容に制限が生じてしまっていることをご理解いただいた上で、この治療を選択していただくように説明させていただいております。
 当クリニックでは、保険診療か自費診療かを患者さまにお選び頂く場合、患者さまに、これらのメリット・デメリットをきちんと説明し、ご自身で選んでいただくこととしております。そして、選んでいただいた治療を可能な限り全力を尽くして行います。当クリニックでは、患者さまとの信頼関係が最も重要であると考えています。お互いに信頼しあえなければ、治療を提供することはできません。ご不明な点はお気軽にご相談ください。
 私が治療を行う際は、患者さんがもし自分の家族であったらぜひ受けてほしいと思う治療法を提案するように心がけております。わからないことがあれば診察時に何なりとご質問ください。治療に際しては納得して手術を受けていただくことが大切だと考えております。できるだけ不安を取り除き安心して手術をうけていただけるように適宜しっかり説明をさせていただきます。

文責 整形外科専門医・手外科専門医 戸谷祐樹

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