切らないドケルバン病の手術は、直視下に行うより、見えない組織を傷つけてしまう可能性があると考えられていました。しかし、実はエコーで重要な神経や血管は見ることができるため、事前に損傷を回避できます。それでも、通常の整形外科で使われる18MHzのプローブではごく小さい神経や血管が見えない可能性がありました。そこで整形外科超音波診断治療を得意とする当クリニックでは、24Mhzの超高精細プローブ(エコーでは、周波数が大きいほど分解能が高い)を導入し、その危険性を可能な限り下げるようにしています。24Mhzの超高精細プローブは大学病院レベルでしか導入されておらず、同プローブを使用している当クリニックは、丸亀市、ひいては香川県でも数少ない医療機関の一つとなっております。
万一腱鞘の切り残しがあったとしても、追加の注射処置を行うことで完全な開放を得ることができます。高精細エコーの導入によりそれはほぼ解消され、切開を入れる手術と同等の成果が見込め、痛みと傷が少ない安全な治療だと考えています。どうしても腱鞘が切れない場合や大きな隔壁がある場合は切開術へ移行させていただきます。
また、一般的にいかなる手術・処置も体に侵襲を加えるため、合併症のリスクがあります。具体的には、①薬剤によるアレルギー、②腫れや出血・血腫による合併症、③感染、④神経・血管損傷、⑤疼痛またはそれによる運動障害、⑥血栓・塞栓症、⑦皮膚瘢痕・ケロイド・創部痛、⑧関節拘縮もしくは関節不安定性(関節を操作する場合)、⑨その他の合併症(CRPSなど予期せぬ合併症や、患部のみならず他の部位の不具合など)などを生じることがあります。未来は予測できないことも生じますので、状況に応じて最善と思われる対処法(薬剤の投与、術式の追加、処置の追加、蘇生処置、救急搬送など)を行います。緊急の場合は、同意なく行うこともありますが、ご理解のうえ手術をお受けください。