ハイドロリリース・筋膜リリース・末梢神経リリース

丸亀 香川

このページの内容一覧

ハイドロリリースとは?

 ハイドロリリースとは、新しい概念の注射です。生理食塩水や乳酸リンゲル液を含む液体を的確に患部に注入することで、その部位の癒着、動き低下、循環不全、神経への刺激を全て解消させる注射です。硬くなったスポンジに水を垂らすと柔らかくなるようなイメージです。人間の体は、さまざまな部位で、スポーツの怪我、運動のしすぎ、悪い姿勢の継続、加齢などによって、筋肉、筋膜、神経、靭帯、関節といったあらゆる組織が硬くなり、くっついて、その本来の動きや滑りを妨げ、場合によっては神経にその刺激が入り痛みを出します。
 ハイドロリリースはその硬くなった組織を柔らかくし(柔軟性改善)、動きを改善(癒着解除)、圧迫を緩める(除圧)、疼痛物質を薄める(除痛)と考えられています。 
  当クリニックのハイドロリリースは、エコーを用いて、痛みの部位に的確に注射いたします。今まで正確に注射できなかった細かい神経や、股関節や腰などの深い関節包や神経でも、注射を行い、取れなかった痛みを取ることにチャレンジしています。

痛みの原因は結合組織(ファシア)に存在

 最近の研究で、トリガーポイントと呼ばれる痛みの部位は、Fascia=ファシアと呼ばれる部位、すなわち筋肉や筋膜、腱や靭帯、脂肪組織といったいろいろな結合組織に存在することがわかってきています。
 このファシアは、様々な組織のスキマに存在し、お互いに連結してからだの動きを制限したり協調したりしています(ファシアの連動)。
 長年の姿勢の悪さや、怪我などによって、ファシアが硬くなったり、隣の組織と癒着して動きを制限し、痛み物質が貯留したり、神経そのものを圧迫絞扼することで、肩こり、腰痛、五十肩や神経痛などがおこると言われています。硬くなったり、くっついたファシアの部位がわかり、その部位に治療ができれば、痛みを改善できるのです。

エコー なら、痛みの原因部位を正確に特定、即治療

 痛みの部位やその関連部位にエコーをあてると、白く重積した異常ファシアがみられ、その部位の伸張性や滑走性がおち、周囲の組織とくっついて、痛み物質が溜まっています。
 エコーガイド下ハイドロリリースは、エコーで白く重積したファシアを確認して、薬液を注射することで、くっついた組織をはがし、また痛み物質を押し流すことができます。エコーで、注射後に筋膜の滑走の改善を確認したり、周囲の血管の拍動の増大をみとめ、効果を確認します。そして何より、疼痛が一気に改善します。
 薬液は生理食塩水(塩水)か乳酸リンゲル液ですので、妊婦さんでも子供さんでも、安心して使用することができます。
 これらの筋膜や重積した結合組織にする注射を ”ハイドロリリース注射” といい、今までのトリガーポイント注射にかわる新しい治療として注目されています。さらに最近は神経周囲に直接リリースを行う、”末梢神経リリース” や、可動域制限のある関節に打ち、可動域を改善を目的にする注射も行われています。

ファシアの重積(エコーとシェーマ図)

末梢神経の圧迫も改善(末梢神経リリース)

 筋肉や腱の病気と考えらていたテニス肘や肩こりなども、筋肉が硬くなり、その間を通る神経が挟まって症状を出していることがわかっています。
 また脊椎疾患の場合も、障害神経の支配下の筋肉が硬くなり、筋肉の間を走る末梢神経を障害することがあります。この末梢神経の周囲にハイドロリリースを行う ”末梢神経リリース” を行うことで、症状を緩和させることできます。高精細エコーの導入によって、かなり細い末梢神経の部位まで特定してリリースできるようになりました。慢性的な神経痛で他の神経ブロックの効果がなかった場合、一つの選択肢と考えられます。
 * 原因を取り除くことはできませんが、経験上かなりの長期間、効果が続くこともあります。

痛みを感じているのは神経のため、筋肉を緩めると同時に、神経の周囲の治療も必要です。高精細エコーガイド下のハイドロリリースであれば、さまざまな神経のハイドロリリース(神経リリース)が可能です。

梨状筋の周囲でくっついた坐骨神経

メリット(利点)・デメリット(副作用)について

 エコーを用いるため、発痛源に正確にアプローチできます。また、安心安全な生理食塩水等を使うため、アレルギー反応や副作用がありません。また投与箇所、投与回数などの制限もとくにありません。

 デメリットとしては、注射であるため、痛みが伴い、出血、腫れを起こすことがあります。また感染のリスクはごく稀ながらゼロではありません。運動療法や姿勢の改善が見込めないと、短期的な効果しかないことがあります。

 保険診療で行う場合は、麻酔薬を使用しないといけないこと、1週間に1回しか打てないなどの制約があります。

ハイドロリリースの対象はどんな病気?

 結合組織(神経周囲の結合組織も含む)の痛みであれば、急性の痛み、慢性の痛みのどちらでも効果があります。

 具体的には、ぎっくり腰、寝違え、むちうち、慢性腰痛、肩こり、五十肩、アキレス腱炎、テニス肘、肉離れ、神経痛、腱鞘炎、手根管症候群、肘部管症候群、椎間板ヘルニアや頸椎症などの神経痛など、多岐に及びます。マッサージや電気治療、鍼灸で治らない、慢性的な痛みについても良い適応です。

 筋膜、神経のどちらにも同時にリリースを行うことも可能です。
 * 液体で剥がす、痛みを洗い流すので、高度な癒着や、外傷や手術後の瘢痕などははがれません。

 * 関節内の痛みは癒着ではなく、炎症や物理的な刺激であることがあるうえ、関節内は密閉空間のため、痛み物質を洗い流すことができませんので、適応外となります。もやもや血管や炎症に対する治療、ヒアルロン酸などを用いた治療が適応になります。

肩こり、腰こりから痛みが発生するメカニズム

① 不良姿勢などのために、筋肉の「こり」が慢性化して、筋膜線維がくっつく(癒着)

浅層筋(アウターマッスル)と深層筋(インナーマッスル)がくっつきよじれが生じている。

② こった筋肉が、前かがみや下向き姿勢により、さらに引っ張られ

③ くっついて伸長できず、筋膜や筋線維が断裂

④ 癒着した筋膜が神経とくっつき、神経に刺激が入り痛みを発生。

くっついた部分で神経がひっぱられ痛みを発現し、歪みを生じた筋肉が伸張できずに断裂

 不良姿勢や繰り返しの動作による筋疲労が繰り返され、微小な損傷がおこるとそこが癒着する(くっつく)ことで、筋肉や腱の全体の動きが妨げられます。また、ひっぱられた筋肉の間を走る血管はつぶれるため、組織の栄養不足・酸欠がおこりさらに組織は固くなります(筋攣縮)。
 固くなり、くっついた筋肉はうまく伸びることができず、さらに引っ張られると、すこし離れたところの筋損傷(肉離れ)や関節の異常運動を引き起こし痛みが急に増強します。(寝違え・ぎっくり腰のメカニズム)

筋肉のこりに対するハイドロリリースのエコー画像とそのイメージ図

エコー画像

 エコーを用いて、白く重積下部位に生理食塩水や乳酸リンゲル液を注入し、筋膜、結合組織の滑走性をあげるとともに、痛み物質を押し流し、症状の改善をはかります。

ハイドロリリースのシェーマ図

ハイドロリリースの効果を保つために

ハイドロリリースの効果を保つためには、再癒着や筋肉、ファシアの状態を良好に保つことが大切です。そのために、注射で痛みが取れた(筋膜が剥がれて滑走性が出た)後に、毎日ストレッチをしたり、筋力強化や運動の習慣を身につけ、普段の猫背や丸くなった姿勢の改善に取り組むことが大切です。そうでなければ、ふたたび癒着や痛みの再発が起こります。(何度でも注射は可能ですが、なるべく注射の回数は少ない方がいいですよね。)

ハイドロリリースをご希望の患者さんへ

 ハイドロリリースはエコーを用いて行います。癒着場所が複数箇所に及ぶこともあり、注射の回数が複数箇所におよんだり、癒着部位、発痛部位の診察に時間がかかることがあります。混み具合によって当日施行できないこともありますので、ご了承くださいますよう、お願いいたします。

当クリニックで行うハイドロリリースの種類について

 ハイドロリリースの治療部位は、筋肉、筋膜はもちろん、高精細エコーの導入によって、今までは考えられなかった細かい神経周囲のリリースもできるようになっています。その成果により、神経が障害されて起きるさまざまな病態や、筋攣縮(筋肉が神経障害により思うように動かず固まってしまうこと)を改善できるようになりました。
 筋攣縮の改善は、動きの改善をおこし、関節の求心性を高めて、障害を起こさないコンディションに高めてくれます。

頚肩部(肩首まわり)

頚肩部のハイドロリリースの主な治療部位(疾患によっては掲載されていない部位を治療することもあります)

 このような治療の対象になる疾患は実に幅広く、頚肩部に限っても、次のような疾患が対象になります。
 慢性疾患としては、肩こり・首こりや肩峰下インピンジメント症候群、腱板損傷・腱板断裂、凍結肩のような肩関節硬縮、五十肩・肩関節周囲炎などがあります。
 さらには、スポーツやオーバーヘッドスポーツによる投球障害肩(SLAP損傷、インターナルインピンジメント、ベネット病変、前方・後方関節唇損傷、肉離れ、UPS、上腕二頭筋腱腱鞘炎、RI lesionなど)なども良い適応です。
 神経由来の症状をおこす、頚椎神経根症、腋窩神経麻痺(QLS症候群、小円筋症候群)、肩甲上神経麻痺(ガングリオン)、肩関節脱臼術後の神経由来の痛みもハイドロリリース注射が効果を示します。
 上の疾患とも関わっていきますが、肩甲骨の位置異常や機能障害(Dyskinesia)が原因で生じている痛みや動きの低下も、ハイドロリリース注射と運動療法で改善が見込まれます。

腰殿部(腰おしりまわり)

腰殿部のハイドロリリースの主な治療部位(疾患によっては掲載されていない部位を治療することもあります)

 腰殿部の治療部位は実に多彩です。しかも疼痛の発生部位は複数に渡ることも多いため、診断にこまることも少なくありません。
 一つの部位を治療しても、いままで気づいていなかった別の部位の痛みを感じるようになることも多いため、治療期間が少し長くかかる場合もあります。
 対象疾患としては、腰部筋筋膜性疼痛(脊柱起立筋、多裂筋、腰方形筋、大腰筋、腸骨筋、臀筋群、梨状筋などの股関節外旋筋群など)、椎間板ヘルニア、椎間関節障害、仙腸関節障害、坐骨神経痛、グローインペイン症候群、脊柱起立筋付着部障害、棘突起インピンジメント症候群、腰部靭帯損傷(棘上靭帯、棘間靭帯、横突起間靭帯など)が対象になります。
 また、細かい神経にもアプローチでき、帯状疱疹による神経痛、肋間神経痛、梨状筋症候群、上殿皮神経、中殿皮神経、上殿・下殿神経痛、ハムストリング損傷後の後大腿皮神経・坐骨神経の痛み、外側大腿皮神経の痛み、大腿筋膜張筋の痛みなども治療できます。
 最も難しいのは診断で、圧痛や動作時痛以外に診断するすべがなかったり、圧痛すらないこともあるため、注射の回数が増えてしまうこともあります。
 そのようななかでも、当クリニックでは、専門的な知識と高精細エコーにより、的確に神経・筋肉を同定しリリースすることで効果を高めています。

文責 整形外科専門医・手外科専門医 戸谷祐樹

アクセス

PAGE TOP